​皷谷&堀川我塾
議論先導者:皷谷 直紀(ニューヨーク市立大学障害学専攻)・堀川 愛(「子どものみかたプロジェクト」代表)

皷谷 直紀(つづみたに なおき)

1996年生まれ。斉藤公子監修の保育園からオルタナティブ教育の一つであるシュタイナー学校に12年間通い、アメリカ留学へ。現在はニューヨーク市立大学で障害学を専攻。現在の研究関心は社会課題解決の活動をする人たちの当事者性についてや、社会課題解決の活動をするにあたってマイナスを補うのではなくプラスアルファを生む仕掛け作りなど。

堀川 愛(ほりかわ あい)

食品メーカー人事総務、テーマパーク運営会社の企画統括・ライター・バックトランスレーターを経て、フリーランスライター、コンサルタントとして独立。主に就労、子ども、健康に関する記事等を執筆。2011年、子ども関連施策等のシンクタンクとして「沖縄県子ども総合研究所」を設立。2015年~2017年沖縄県事業として沖縄県子ども調査を実施(委託事業)。2015年の調査では、47都道府県唯一の沖縄県単体の子どもの貧困率を算出。現在は子どもの権利条約を基軸とし、すべての人が生きやすい優しい社会構築を目指して「子どものみかたプロジェクト」を立ち上げ活動を展開中。保育所等の子ども関連施設、各種企業等の研修講師。著書に「子どもの島沖縄~子どものみかたであるために~」(単著/2017年日本機関誌出版)、子どもの貧困白書沖縄(共著/2016年かもがわ出版)

当事者性の在り方とその捉え方(当事者性我塾)  皷谷&堀川我塾第1回(2022/05/12)

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現在、当事者たちが自身の体験をもって語るという手法が多く取られ、当事者性を持った発言はある意味で絶対的な力を持つ論調の一つになった。社会問題はその当事者が問題だと訴えることで顕在化するという「声を上げる当事者」に頼ってしまう実情が生み出す別の課題がそこに現れているようにも思う。果たして社会課題は、当事者の声に頼ることでしか問題の顕在化や解決の道筋を示すことはできないのだろうか。 社会課題へ向き合っていく為に私たちはまず今絶対的な力を持っている「当事者性」というものの持つ力を正確に理解し共通認識としていく必要があるのではないか。
 

また、当事者が訴えなければならなかった体験や経験が「私たち(社会)に多様性の大切さや社会課題がそこにあることを提示してくれるためのもの」として消費されていることについてのメリット・デメリットを考察し、その負の側面について問題提起をしていきたい。 今回の我塾では、当事者と当事者性への理解を深めながら、社会課題について共に考え歩んでいく為に、当事者の持つ「力」との向き合い方、その声の聞き取り方を改めて考えながら、当事者の心理的安全性の担保ができる場を私たちは構築していけるのか等についても皆さんと議論を深めたい。

記号化しない当事者性のあり方(当事者性我塾)  皷谷&堀川我塾第2回(2022/05/26)

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前回の当事者性我塾では、当事者とは何かについて、社会概念としての「当事者」と、マイノリティ問題としての「当事者」のそれぞれの側面から二つの別の「当事者」がそこに存在していることを丁寧に紐解いた。この前提条件を基にそれぞれの事象における「当事者」が「当事者性を持つ」ということが何を指すのか、またマイノリティ問題における「当事者である(その状況にある)」ことから「当事者になる(社会に向けてその存在や課題を知らしめる)」*1ことを過剰に求める社会風潮が「当事者消費」になっている現状についての思考整理を行った。
 

当事者への社会課題解決のための消費(二次被害)を防ぐための提案として、当事者から当事者性を切り離し、その「事象」と「影響(被害等)」をアーカイブし、当事者個人の情報や当事者性に頼ることなく社会課題にあたることを提案しその是非、可能性について議論した。その結果、当事者が発信することのインパクトや当事者から人格を切り離した当事者性による記号化や恣意的な切り取られ方についての懸念等の議論ができた。
 

第二回の当事者性我塾では、前回出た懸念点や議論のある一定の方向性と決着点を見出すことが今後の当事者性に関する学術研究の重要な課題と捉え、①当事者から人格を抜いたら記号化するのか? ② 個に焦点を充てざるを得ないのはなぜか?それを打破する方法の模索 ③ 無関心領域を関心領域にするためには?について参加者の皆さんと共に思考実験していきたい。*1上野千鶴子「ケアの社会学ー当事者主権の福祉社会へ」2011年より引用