小林(知恵)我塾
議論先導者:小林知恵(横浜国立大学 総合学術高等研究院 特任教員 助教)
小林 知恵(こばやし ちえ)
横浜国立大学 総合学術高等研究院 特任教員(助教)。北海道大学博士後期課程修了。博士(文学)。専門はメタ倫理学、科学技術倫理。
科学技術の二重性 小林(知恵)我塾第1回(2024/01/21)
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科学技術の発展が私たちの生活に多大な恩恵をもたらしてきた一方で、その知見や成果物が当初の想定と異なる仕方で使用された場合、思わぬ影響を及ぼすことがあります。たとえば、公共の利益や福祉向上に資するはずの生命科学研究の成果がバイオテロに悪用された場合、多くの人々の生命や健康が著しく害されることは容易に予測できるでしょう。このように科学技術にはその知識や製品利用の有り様によって二重性(デュアルユース性)が伴っています。
こうしたテロに代表されるような悪用リスクを低減するために、デュアルユース性を伴う研究開発の管理強化に踏み切ることが望まれるかもしれません。他方で、こうした方策によって望ましい帰結が期待される研究開発が制限され、研究者の自由な発想や主体的な研究活動が妨げられることもありえます。とはいえ、研究開発の自由な実施を最大限許容するならば、安全保障上の脅威は増大するばかり。
このような板挟みの状況は「デュアルユースジレンマ」と呼ばれ、デュアルユース研究技術の管理のあり方を考える上で大きな障壁となっています。今回の我塾では、デュアルユース研究技術をめぐる不確実性を出発点として、以下のテーマについて皆さんと考えていきたいと思います。
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科学技術の善用と悪用を区別することはできるのか。
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デュアルユースジレンマは科学技術の利用者側の問題なのか。研究開発に関わる人は無関係なのか。
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デュアルユース研究技術とどのように付き合っていくべきか。